日射計とは何ですか?
日射計の基礎についての簡単な紹介
本記事は、基礎的な技術的背景を持つ読者に対して、日射計と全球日射量の測定についての入門的な説明を提供することを目的としています。
日射計の概要
日射計は、水平面に入射する半球状の太陽放射(全球日射量)を測定する装置です。 測定単位は W/m² で、気候観測や気象モニタリングで長く利用されてきました。 近年では、太陽光発電の普及に伴い、日射計の重要性がさらに高まっています。
日射計が何を測定するのか、どのような用途に役立つのか、そしてどのように動作するのかについて、この記事では基礎からわかりやすく紹介していきます。
日射計:太陽放射照度センサー
日射計は、全球日射量を測定するセンサーです。全球日射量とは、特定の向きを持つ面に、半球状(2π sr)の視野から単位面積・単位時間あたりに入射する太陽エネルギー量のことで、Eg↓ と表されます。 この全球日射量には、直達日射と散乱日射の両方が含まれます(図1)。
直達日射の寄与は E · cos(θ) で表されます。 ここで、θ は測定面の法線と太陽位置のなす角、E は直達日射の最大値です。 これらを組み合わせることで、全球日射量が求められます。
Eg↓ = E⋅cos(θ) + Ed
ここで Ed は散乱日射の寄与分を表します。

多くの場合、測定対象となる面は水平であり、その場合、半球状の視野は空全体(スカイドーム)に対応します。このとき測定される量は全球水平面日射量(GHI)で、Eg↓h と表されます(図2 左)。
一方、面が傾いている場合もあります。例えば太陽光発電では、測定面がしばしば太陽電池モジュールの設置面(POA:Plane of Array)に相当します(図2 右)。この場合に測定されるのは傾斜面日射量(GTI)で、Eg↓t と表されます。
特別なケースとして、面は水平のままですが、日射計を空ではなく地面側に向けて設置する場合があります。このとき測定されるのは、地表面からの散乱反射日射量で、Er↑ と表されます。

全球日射量は、太陽の高度(つまり地理的位置、時刻、季節)によって大きく変化します。また、雲、エアロゾル、スモッグ、霧、降水などの気象・環境要因によっても影響を受けます。 全球水平面日射量の一般的な値は 0〜1400 W/m² の範囲にあります。
場合によっては、建物や雪面からの反射によりこれを上回ることがあります。さらに特殊な例として、太陽集光装置の中心部では、より高い値が観測されることもあります。
日射計は何に使われるのか
太陽は、地球にとって最も重要な外部エネルギー源です。これは大きく分けて 気象・気候 と 太陽エネルギー利用による発電 の2つの分野に大きな影響を与えています。
太陽放射は、地球の気象パターンを形成する主要な要因のひとつであり、気象・気候研究において欠かせない要素です。これらの研究では、日射計を用いて 全球水平面日射量(GHI) を測定し、地表に到達する日射量を把握します。 大気圏外でのGHIは比較的予測しやすいものの、地表での照度は雲量、エアロゾル濃度、霧、スモッグなどの影響を強く受けます。
また、興味深い測定として 正味日射量 E = Eg↓ − Er↑* や アルベド A = Er↑ / Eg↓ があります。 この測定では、2台の日射計を水平に配置し、1台は空に向け、もう1台は地面に向けて設置します。
太陽光発電業界では、日射計は太陽光発電所(PVプラント)の性能監視に利用されています。 日射計で得られた日射量に基づく期待される発電量と、実際の発電量を比較することで、PVプラントの発電効率を評価できます。 効率が低下している場合は、設備の点検やメンテナンスが必要である可能性があります。
また、日射計は太陽光発電所の候補地評価にも使用されます。 この場合、日射計を用いてその場所で期待できる日射量を測定し、将来的な発電量の見込みを算出します。
建物の自動制御や農業など、ほかにもさまざまな分野で日射計は活用されています。1
日射計はどのように動作するのか
日射計は、ゼーベック効果(熱電効果)を利用した放射照度センサーです。主な構成要素は、1〜2枚のドーム、黒色吸収体、サーモパイル、日射計本体、そして場合によっては補助電子回路です。
日射計のドームはフィルターとして機能し、およそ 0.3〜3×10⁻⁶ m の波長の太陽放射を透過させます(近赤外、可視光、UV-A、およびUV-Bの一部を含む。図3参照)。一方で、3 μm を超える熱放射は遮断します。 性能向上のために、2枚目のドームを追加する場合もあります。
ドームの素材には、一般的に Schott N-BK7 ガラスや Schott WG295 ガラスが使用されますが、用途によってはサファイアや溶融石英(Spectrosil、Infrasil)が使われることもあります。 太陽放射の透過率 τ は理想的には 100% に近いものの、実際には 約92% 程度です。
さらに、ドームは黒色吸収体やサーモパイルを雨・雪などの外的環境から保護する役割も果たします。
フィルターを通過した放射は、日射計内部の黒色表面で吸収され、熱に変換されます。 ドームの透過率を τ、黒色表面の面積を A、黒色表面の吸収係数を α とすると、吸収される熱量は次のように表すことができます。
Pabsorption = α⋅τ⋅A⋅Eg↓
これにより、黒色表面からサーモパイルを通って、ヒートシンクとして機能する日射計本体へと温度勾配が生じます。 その温度差は次のように表されます。
ΔT = Rthermal⋅Pabsorption
ここで Rthermal はサーモパイルセンサーの熱抵抗を表します。 この熱抵抗は、サーモパイルの材料構成や形状によって決まります。サーモパイルは、複数の熱電対を直列に接続した構造になっています。 各熱電対は、黒色吸収面と日射計本体との温度差に比例した電圧を発生させます。
u = ς⋅ΔT
ここで ς はゼーベック係数を表します。 例えば、銅–コンスタンタン熱電対のゼーベック係数は 41 × 10⁻⁶ V/K です。
日射計の仕様
日射計には、モデルごとにさまざまな仕様があります。 ここでは、日射計の分類や、「スペクトルフラット」という特性について詳しく説明します。
分類
日射計は、応答時間、熱オフセット、経時安定性(非安定性)、非直線性、方向応答、分光応答、温度応答、傾斜応答といった仕様、さらに校正方法によって性能が評価されます。 これらの要素に基づき、ISO 9060 規格では日射計を Class A、Class B、Class C のいずれかに分類します。
より詳しい日射計の動作原理については、Vignola らによる書籍⁴に詳しくまとめられています。
スペクトルフラット
ISO 9060 では、日射計を Class A、Class B、Class C に分類していますが、これに加えて 「スペクトルフラット」 という新しいサブクラスが定義されています。
多くの用途では、このスペクトルフラットに分類される日射計を使用する必要があります。 スペクトルフラットの日射計だけが、高い精度で測定できるためです。 これは、太陽が雲に隠れた場合や、反射光を含む日射を測定する場合でも同様です。
こうした状況は、例えば以下のような測定で発生します。
- 全球水平面日射量(GHI):部分的または全面的に曇った空の下での測定
- 傾斜面日射量(POA)
- アルベド(反射率)
- 正味放射量(net radiation)
一方、スペクトルフラットではない通常の Class A・B・C の日射計は、晴天時の直達日射が支配的な条件でのみ高精度となります。
スペクトルフラットの日射計を使用する利点は明確で、 晴天の水平面測定だけでなく、GHI、POA、アルベド、正味放射量など、さまざまな条件・配置で同じ校正のまま高精度に測定できる点にあります。
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